29

 寒い。
 己の生みだした氷だ。
 今まで一度もそう思ったことはないのに。
 こんなにも寒い。
 暗いのは何故だ。
 何も見えない。
 行かねばならないのに、井上の元へ。
 あの時の自分と同じ思いを、井上にさせたくない。
 今ここで倒れては。
 一人で死んではならないと、海燕殿の教えも守らなくては。
 死んではならない。
 生きて、再び。
 戻って、その時には、あの愚か者の目を覚まさせると約束もした。
 行かねば。
 嗚呼、きっと行くから。
 どうか待っていてくれ、今、直ぐ―――

2011/03/23







back  top  next