29 寒い。 己の生みだした氷だ。 今まで一度もそう思ったことはないのに。 こんなにも寒い。 暗いのは何故だ。 何も見えない。 行かねばならないのに、井上の元へ。 あの時の自分と同じ思いを、井上にさせたくない。 今ここで倒れては。 一人で死んではならないと、海燕殿の教えも守らなくては。 死んではならない。 生きて、再び。 戻って、その時には、あの愚か者の目を覚まさせると約束もした。 行かねば。 嗚呼、きっと行くから。 どうか待っていてくれ、今、直ぐ―――