暖かい。
誰の霊圧だろうか、ほんのりとこの身を包むのは。喪われたものが徐々に戻ってくるのが分かる。
目覚めよと促されるまま、ルキアは瞼を持ち上げた。酷く重い。だが出来なくはない。
「…良かった…!目が覚めましたね!」
眩しい光を遮るように、視界に飛び込んでくる顔があった。
「虎徹副隊長…!?花太郎……?」
起きあがろうとして腹部に痛みを覚える。まだ治療途中だと虎徹たちにも慌てた様子で止められたが。
何故、ここに彼らがいるのだろうか。ここは虚圏で、自分は十刃、あの海燕の霊体をもった十刃の一人と戦い、そして倒れたはず。
視線を巡らせて、その先に義兄がいた事に、更には手足から血を流していることに驚いた。
兄様、と震える声は構うなといつもの厳しいそれに遮られる。今はただ伏して完治の時を待てと。
「この先にある真の戦いの為に」
白哉の目に何が映っているのかは分からないが、その言葉に頭の片隅が冷えていくのが分かった。白哉の、常に変わらない言動はいつもルキアの胸をざわつかせていたけれど、今これ以上自分を鎮めるものはない。
思い出せ、何の為己がここに来たか。
目を濁すな、見極めろ。
何が出来るか。
治療が終わったと虎徹の言葉も聞き終えぬうち、跳ね起きた。
「行きます!」
白哉の応えは聞かなかった。聞くまでもない。
ただひた走る。何も、喪いたくない。喪わない為には、走らねば。
2011/03/23
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