『04.急接近?或いは。』


「……」
「……」

 お互いに顔を見て、沈黙。
 何と言うべきか良く分からない。
 なんでこんなことにと思っている事は容易く予想がつく。何故なら自分も全く同じだから。
 怪我が治り礼に赴いた十二番隊の隊舎で本に埋もれ部屋の主に発掘され別れて(追い出されて)から十日あまり。とある討伐任務を命じられ部下を数人連れて出てみれば、そこに何故か件の部屋の主。十二番隊第九席、の姿。
 マジなんでだ。

「…十二番隊から調査のための同行願い、出てたじゃないですか」

 実に的確に表情を読んだ自隊の部下が呆れ顔で告げた。

「そう言やそんなのが…」

 あったような、気が。
 しっかりして下さいよォと部下に言われるまでもなく、これからは討伐対象のこと以外もちゃんと資料に目を通そうと心に決める。もっとも目を通して何か変わるわけではないが。
 今この現実のように。
 一番最初によろしくお願いしますと挨拶をしたきり、は何も言ってこないし、恋次も同様だった。
 特に言うべきこと、はないようにも思う。そもそも任務中でもある。だが何となく、その存在が気になる。まるで喉に引っかかった魚の骨のように。無視するのもおかしい。かと言って話がしたいわけでもない。部屋では本の一山を崩してしまったが、わざわざ今頭を下げるようなことでもないだろうし。
 何かやりづれぇな…と恋次は口の中だけで呟いた。



 恋次の胸中は兎も角、任務は滞りなく終了した。怪我人は出たが軽症だったし、元四番隊席官、の手にかかれば呆気ないほどのもので。
 そのは今恋次の目の前で、早速残骸の調査に取りかかっている。が、調査と言いつつ後ろ姿は何だか嬉々としていて、手元の帳面にガリガリ書き込んでる様には吉良曰わく『記録魔』のあだ名も頷ける。

「やぁ、助かりました」

 隣に立つ部下が治療してもらった傷跡を見ながら言った。先頃の恋次の傷と同じく、やがて跡も消えるだろうことは考えるまでもない。

「元四番隊なんですって。さっき聞いたんですけど」
「らしいな」
「あれ、ご存知だったんですか」

 資料すらろくに読んでなかったのにと露骨な表情にじろりと視線をくれてやれば、慌てて事後処理手伝ってきます、との元へ駆け寄って行った。
 その処理もほとんど終わった場に駆け寄った部下は、手持ち無沙汰にに話しかける。どんなこと調べてるんですか、とかなんとか。話しかけられた方は邪険にしないかわり、顔もあげないまま質問に答える。つまり何を調べているか、を。物凄い勢いで。

 「……魂葬後に残された物質の種類と残存数値と今回の虚は数体で一体の形を成す珍しいケースで活動時間や狙われた対象との関連を考えても……」

 降り注ぐ雨のような勢いで分かるようで分からない事をまくし立てられ、部下が目を白黒させているだろうことは見ずとも分かる。
 それまでの素っ気なさから打って変わって滔々と話す様に、他の部下も何事かと視線を送るがに気にする様子はない。元より視線は調査対象に釘づけで気づいてすらないだろう。はぁへぇソウナンデスカーと相槌と言えるのか、返していた部下は少しずつ後ずさっている。

「…やっぱ変な奴…」

 だが、面白い。
 見ていて飽きない。
 夢中になって話す表情が子供ぽくて可愛いような。

「………あ?」

 まてマテ待て。
 何か今一瞬変なこと考えてなかったか俺。
 首を傾げるが、恋次が違和の正体を突き止める前に、こちらは終了しました、と別所で事後処理をしていた者達から声がかかった。

「お、おう。そんじゃそろそろ、」

 引き上げるぞと、未だつらつらと誰も聞いていない解説をぶっているの方を振り返った時だった。
 数体で一体の、虚。
 個別ではごく弱く、霊圧も小さく。
 しかし虚は虚。

「―――吼えろ、蛇尾丸!!」

 たちの背後、鬱蒼と茂った木々の影から飛び出した小さな一体。
 誰かが逃げろと怒鳴り、同時に伸びた蛇尾丸が突風を巻き起こし。
 並ぶと部下をギリギリで避けて、刃は見事虚の真正面を断ち切った。
 ―――の、長い黒髪とともに。



 夕暮れ時、六番隊隊舎前にて。

「お帰りなさいませ!副隊、長……」
「ご無事で…や、あの、ご無事じゃ、ない…?」
「…無事、だよ。全員…」
「で、でもその、副隊長。顔が」
「虚に?って言うか拳骨の跡みたいなんですが」
「………気にすんな………」

(無理ッスよ副隊長ォー!?)

2011/01/16







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