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「…んで、どこのどいつだよ。お前は?」
難なく牢を抜けだし追手も振り切って後、尋ねたのは一角だった。興味がなさそうというよりは如何にも邪魔者扱いの視線を一斉に向けられて、だがむさ苦しいなりをした死神は特に怯んだ様子もなく、むしろふてぶてしいまでに表情を変えなかった。
「お前らの仲間か?」
「え?えーっと…」
「さん、だよ。ほら、ここに来る前に夜一さんが言ってた…」
石田の言葉にすぐ思い至ったのか、井上がああと大きくうなずく。
「じゃあ、石田君たちを助けに来てくれたんですね?」
ありがとうございます!と更木の背から降りて頭を下げた井上に、いや、とだけの反応は薄い。
「一護、からお前たちのことを任された。…このまま、西流魂へ」
「え!?」
「一護のところへ、行くんじゃないのか?」
茶渡が詰め寄るが、が引く様子はない。
「処刑までもう時間がない。今行けば返って足手まといになる」
体格で言えば茶渡の方がを少しばかり見下ろす形になるのが、有無を言わせない強い視線に逆に気圧され、そんな、と井上や石田の声も黙殺される。しかし流石に相当の実力者である更木たちにまで通用するものでもない。
「…てぇことは、てめぇは一護の居場所を知ってるってことだな?」
ざり、と距離を詰める一角に思わず井上たちが後ろに下がった。
「そんなら話は早ェ、吐かせりゃ良いだけだ」
「確かに。どこの誰だか知らないけど、お伺いを立てる必要はなさそうだよね」
美しくもなし、とつけ加えて弓親が続く。後ろに控える更木は動きはしないが、止めもしない。同じくその方法が一番手っ取り早いという顔だった。
「ちょっ、それは」
「引っ込んでろ。あいつの居場所知りてぇのはお前らも同じだろうが」
まったくもってその通りの言葉に黙らされる。現に今まで自分たちも似たようなことをやってきたのだが、目の前の相手は敵とは言い難い。止めるに躊躇い、加担するに躊躇っていると、一角たちに向けられていた目が石田たちを見た。
「石田」
唐突に名前を呼ばれてぎくりと身が強張る。
「西流魂で、待て」
言ってが腰を落とした。逃がすかと一角たちも斬魄刀を抜くが、の方が早かった。縛道の、と声が地を這う。
「―――ぶ、わッッ!!」
地に向かっての拳が振り下ろされ、そこから出た煙幕が辺り一面を覆った。まともに煙を受けた二人が盛大に噎せ返る。揃って燻された目に涙を浮かべようやく収まった時には、既にの姿は名残すらなかった。
「くそ…ッ、こすい手ぇ使いやがって…!」
忌々しそうに一角が吐き捨てるのとは対照的に、石田たちにとり一応の味方と刃を交わすことなく済んでほっとしてしまう。結果的に一護の居場所を知ることは出来なかったが。
「仕方ねぇ…で、どうすんだ、お前ら」
「え?」
「あの野郎の言った通り、西に行くのか?」
問いに一様に息をのんで、だがそれも一瞬だった。
「行きません!」
「行くのは、黒崎の処だ」
「ああ…行こう」
「ここまで来て引けるわきゃねぇだろ!」
足手まといになるかどうか、の決めることではない。きっと何か、出来ることがあるはず。しなければならないことが、あるはず。四人言い交わしたわけではないけれど、異論などない。
そうこなくちゃなァ、と更木が凶悪に笑う。その背にじゃあアタシが道案内するね!と飛び跳ねたやちるが明るく、しかしどこか似通った笑みを浮かべた。
2011/01/05
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