06

 瞬歩を幾度か。落下地点はもはや遠い。
 猫の姿ではいくら瞬歩でもそう距離は稼げない。が、猫の姿であるがゆえに気づくものもない。隊長格にでも見つかれば話は別であろうが、あえて中心から外れた場所を歩けばその心配もない。長くここで生きた夜一には地の利がある。
 ここ数カ月で馴染んだ霊圧を辿れば、とりあえず誰も欠けることなくそれぞれ動いているらしいことが分かる。落下の衝撃は安心していいらしい。ならば己も動くか、と思ったと同時に、背後にこれもまた馴染みある霊圧が現れた。

「…来たか、」

 予想していたより早い。
 落ちた場所が偶然近かったのか、男の足が早かったのか。恐らく両方だろうと勝手に結論付けて、夜一は背後を振り返った。



 薄墨の長い髪。死覇装。帯刀はしていない。

「五人、か?」

 旅禍を目の前にしながら死神、はただ淡々と尋ねる。黒猫もごく自然に応える。それは丸きり、ただの知人同士のやり取りだった。

「うむ」
「あの、子供が?確か一護と」
「他に三人と、後は空鶴の弟が来ておる」
「志波空鶴の…そうか」

 流魂街と言わず瀞霊廷でも名の知れた花火師の名に、が一人納得したようにうなずく。

「他の旅禍は」
「…井上という女子が一人。でかい男が茶渡で…あと一人は滅却師の生き残りじゃ。石田という」

 言ってちらと相手の表情をうかがったが、変化はない。元よりそのむさ苦しい髪に隠れて見えにくくはあったが。滅却師の名を聞いて態度を変えるような男ではないと、浅からぬ付き合いで分かっている。

「わしらが別れたのは偶然じゃ。これからどうなるかはわからぬが、いざという時は、頼む」

 わずかに感じられる霊圧に遠く眼をやりながら夜一が呟き、が無言でうなずく。一護たちの侵入を受け死神たちも各々動き出した為か、霊圧は混乱してきている。距離もあって最早区別はつかない。
 夜一が腰を上げる。同時にも夜一に背を向けた。これ以上の言葉は必要ない。互いにそう余裕があるわけでもない。

「…無茶はするな」

 地を蹴る瞬間、低い声が夜一の耳に届いた。振り向こうかとも思ったが、最早その後ろ姿も捕えられないことを思って止める。代わりに強く、駆けた。

2011/01/01







back  top  next