※年齢制限的表現有り。
※でもぬるいから!期待はしないで!
※R15くらい?
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 まだ朝と言うには早いだろう、だがもう夜ではない。明かりも必要ない視界にまず映ったのは、昨夜部屋に連れ込んだ恋仲の顔だった。

「あ、起きた」

 こちらを覗きこんでいた顔がふっと緩む。
 まだうまく働かない頭ではなく身体が勝手に動いて隣の熱量を抱え込んだ。小さく声をあげたが大人しく恋次の腕の中に収まったの身体はしっとりしている。

「風呂、入ったか?」

 ふわりと漂う石鹸の香りは悪くない。が、昨夜の名残がきれいさっぱり洗い流されてしまったようで少し残念な気もする。

「借りた。お前も入ってくれば」
「んー…後でな」
「寝るのか?腹減ってねーの」

 言われてほとんど何も食べず寝たことを思い出す。が、ここ数日殺人的な忙しさでそれがやっと終わった時、己の中で食欲よりもこちらの欲の方が勝ったという話だからマァ仕方がない。飢えた自分の前に獲物の方からのこのこ顔を見せに来たのは時機が良かったというか悪かったというか。
 解放感からと久しぶりなのとで性急に求め過ぎたような気もするが、この声を聞く限り獲物、もといの機嫌も悪くなさそうで内心ほっとする。

「減ってっけど、お前何してたよ」

 ひんやりとした早朝の空気の中で自分のものではない体温は心地良く、またとろとろ夢の中へ落ちていきそうになりながら尋ねた。

「あたしもまだ、」
「メシじゃなくてさっき。布団の横で」
「んー別に。見てただけ」
「見てた?何を」
「お前の寝顔」

 はぁ?と思わず腕の中の顔を覗きこめば、は手を伸ばしてぎゅっと鼻をつまみ、悪戯っぽく笑ってみせた。

「ガキくせーと思ってさ」

 …一瞬跳ねた心臓が憎い。

「てめ…」
「考えてみりゃ年下だもんなァ、お前」
「年下って、ンな大した…」

 確か霊術院では檜佐木の一つ上だったはず。そう反論すれば、だって、と首をかしげて見せた。普段の言動やこうした仕草からして年長者などと思ったこともないのだが。

「お前、死神になる前も合わせて…五、六十年ってところだろ」
「そんなもんか。って、お前は」
「あたしがこっち来てから今日で百十七年三ヶ月と六日だな」

 その数字の異様な正確さは、まァ置いておくとして。

「……お前って案外ババァだったんだな」
「思い知ったか、クソガキ」

 実年齢と見た目が一致しない尸魂界の住人でなければぶん殴られても文句は言えないだろう暴言を更にやり込められて唸る。

「ぐむ…っ」

 してやったり顔に腹立ち紛れ、背に回していた手を下へとずらしてやればギクリと身体が強張り、少し溜飲が下がる。

「…ッ、こら!ババァに盛ってんじゃねーよ!」
「うっせ、ガキのやることだ。大目に見ろ」
「朝から付き合ってられっか、やめ…ッ!」

 どんなにしっかり帯を結んでいたとしても所詮夜着。用心の足りない衿から侵入して脇腹をなぞり上げてやる。と、面白いほど背が跳ねた。その隙を突いてぐるりと身を起こし抑え込みをかける。薄桃色の肌は風呂上がりの為ばかりではあるまい。

「お前、ここ弱ェ」
「やめろってば、くそっこの!」

 暴れてみても既に遅い。この体格差、下になった時点で敗北は確定している。往生際の悪い様に意地悪いものがじわじわ浮かんでくるのは男の性というものか。

「マジで色気ねぇなァ」

 普段かっちり着込んだ死覇装の下に隠されている鎖骨が露わになっている。昼間ほどではない視界だが二つの、どちらかと言えば控えめな膨らみの間に薄ら浮き上がる汗がはっきりと見える。それだけで既に十分扇情的であるのに態とそう嘯いて見せれば、案の定顔を更に赤く染めて、きィと無駄に暴れる。余計に露出が多くなる事実に気づいているのかいないのか。まァどっちでも良いのだけれど。

「…んなもんっ、クソ喰らえ、つーの!」

 日に焼けていない腿を際までさらしながら、それでこういう発言をするあたり、どっちがガキかと真剣に問いたいところだが。

「お前なァ、クソ喰らえって…」
「萎えたか阿呆恋次っ」

 ふん、と未だ強気な姿勢を崩さないつもりの、あくまでつもりの女に向かって、恋次はニンマリ笑って見せた。

「……なめんなよ?」

 本能で身の危険を感じ取ったか、咄嗟に逃げを打とうとする。それより早くごつ、とやや強めに額を合わせる。痛みに思わず晒した無防備な赤い、赤い口内を塞ぐ。不意打ちに委縮していた舌だったが無理やりに追い立ててやればすぐさま挑んでくる。喧嘩っ早い性根がなんとも、恋次にとって都合の良い。そう、の何処もかしこも強気で喧嘩っ早くて負けず嫌い。本心では怯えているくせ必死にそれを隠そう、取り繕うとする様こそ恋次を一層煽っている事実に気づかない。
 生意気なそれをさんざ絡めて弄って、最後に強く吸い上げてようやっと解放してやる。一瞬だけとろりと呆けた目が恋次を見上げた。慌ててまた負けず嫌いを装うのだがその全て、手に取るように分かるから意味がないどころか逆効果に終わる。その事実に自身が気づいていないことこそ最大の原因なのだった。
 教えるすつもりは取りあえず今のところ、恋次にはない。

「…これっ位で萎えるくらいなら、最初から手ェ出してねぇっての」

 多分何か反論するつもりだったのだろう、空気を取り込む為に開いた口をしかし許さず、またすかさず塞いだ。

「―――ッ」

 言葉にならない声が重なった口内で響くが気にせず蹂躙していく。今や目も完全に冴えて気力に満ち満ちた恋次にとって、組み敷いたの抵抗など。一つ一つ念入りに潰していくことこそ醍醐味に捉えていると一体いつ、この女は気づくだろう。
 直に触れ合う舌が、恋次の名前を呼ぶ。声ではなくて動きで。
 心中は兎も角身体は恋次の与える刺激に実に正直で素直。耳の後ろを、うなじを、脇腹を、控えめながらやはり柔らかい胸部の膨らみを、腿を、撫でてやればひくひくと跳ね、それからあからさまなほど従順に脱力していく。胸板を押し返そうとしていた腕が縋るものに変われば―――恋次の完全勝利だった。

「おまえ…ッ、マジでばか…!」

 やっとまともな呼吸を許されて、だが好き勝手された所為で罵倒も舌足らずにしかならず、何よりこちらの胸元をしっかと握る手が矛盾も明らかだった。
 泣きそうな、ではなく確かに目尻を涙で滲ませながら言うの頭を、子供を慰めるのと同じように撫でてやる。汗の浮いた額を拭い出来るだけ優しく唇を落として、しっとりした髪を指で遊ぶ。

「あほ、恋次」
「はいはい」

 酸素が足りないとばかり大きく上下する胸に一つ赤い花を咲かせるとまた細く鳴いて、それは大いに恋次を満足させた。とうとう、ほろりと目尻に溜まった涙の粒が零れる。

「…まぁ確かに。馬鹿ではあるなァ」

 答える己の顔はさぞや獣じみていることに違いない。だがそれも致し方あるまい。眠る獣の目を覚ましたのは紛れもなくこの、威勢の良い羊の娘であるのだから。
 大人しく喰われるが定めとばかり、恋次はその美味そうな肉に牙を喰い込ませた。

2011/05/14







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